そこでこう言われたそうだ。

『俺にはこの生き方しかなかった。だから少なくとも後悔はしてねぇ。でもな、お前はまだ中学生のガキだ。頭も良いし、十分やり直せる。取りあえず一度、普通の学生生活ってもんをやってみるのも良いかもしれねぇぞ?』

 と……。


「そのすぐ後くらいに親父が今の学校のパンフレット持ってきたからな。まあ、行ってみるか、くらいの気持ちで受けたんだよ。……でも、早瀬さんがどうしてあんなこと言ったのかだけ分かんなかった」

 過去を思い返しながらそこまで言った陸斗くんは、顔を上げて「けど」と続ける。


「さっき会って分かったよ。あの奥さんの存在のせいだろ。って言うか、腹の子供のせいかな?」

 多分父親になるって思ったとき、子供に後悔させたくない、自分と同じ道を歩ませたくない。

 そんな気持ちになったんだろう。


 そして、弟の様に思っていた陸斗くんを見てあんな言葉が出てきたんじゃ無いか、と陸斗くんは言う。