「前に、俺が今の学校に来た理由話しただろ? そのときお前、何で親父のいう事聞いて反発しなかったのかって聞いてきたよな?」

「ああ……」

 思い返しながら相槌を打つ。

 確か陸斗くんにメイクをした時の話だ。


「その反発しなかった理由があの人なんだよ」

「そう、なの?」

 一応相槌は打つものの、想像もつかなくて小首を傾げる。


「早瀬さんもケンカ強くて、どっかの暴力団の子分から声がかかってさ、いずれ舎弟になってやるってついてったはいいけど、早々に抗争の捨て駒にされて切り捨てられちまった」

「……」

 暴力団なんて言葉が出てきて、どんな反応をすればいいのか分からなくなる。

 縁のない世界だから、良く分からないって言うのが正直なところだ。


「それで大ケガして入院したときに見舞いに行ったんだ。そんな人でも、俺にとっては尊敬できる人だったから」