「……やだ」

 まるで駄々をこねる子供のような言い方に力が抜ける。

 でもまたさっきみたいに顔を近付けられるのも、色っぽい声で(ささや)かれるのも勘弁してもらいたい。


「でも色々とあたしの心臓が持たないから、離してほしい……」

 理由もちゃんと話すと、陸斗くんは二度ほど瞬きをしてニィと口角を上げた。


「ふーん、じゃあしゃーねぇな」

 そう言って肩から手を離し、背中を撫でるように移動したかと思うと反対側の手を取られる。

 組むように繋がれたそれは、雑誌で見たことがある。

 恋人つなぎってやつだ。


「これで勘弁してやるよ」

 意地悪く笑う陸斗くんに、あたしは「はわわわ」と変な声を上げることしか出来ない。


「っぷは! お前、ホント面白れぇな」

 そう吹き出す陸斗くんだけれど、手は離してくれなかった。