呼び捨ては抵抗があると思っていたのでちょっと躊躇(ためら)っていると。

「呼べよ」

 と顔を近付けてきて甘い声で囁かれた。


 何このフェロモン出しまくり男子はぁ!!?

 何だかもう訳が分からなくなって、取りあえず言う通りにする。


「っ! り、くと……くん」

 それでもやっぱり抵抗があって最後には“くん”を付けてしまう。


「……陸斗」

 短く呼び捨てろと要求されるけれど、何かもう色々無理であたしは言葉も出せずに首を横に振った。


「……仕方ねぇなぁ。それで我慢してやるよ」

 ちょっと不満そうだったけれど、そう言って顔を離してくれる。

 そこで深く息を吐き、あたしは息を止めていたことに気付いた。


「ひだ……じゃなくて、陸斗くん。手も放してくれないかな?」

 ちょっと落ち着きを取り戻せたので、肩の手も離してもらえるように頼む。