前にここに来た時のことを思い出すと恥ずかしくなるけれど、今日はその手の話をしに来たわけじゃない。

 気を取り直して、あたしは日高くんの話を聞く体制になった。


「……お前にはさ、俺の実家は隣の県だって言ったよな?」

「うん、確か聞いた」

 何で今の学校に入ったのか聞いた時に教えて貰ったはず。


「で、今回の校外学習も隣の県ってわけだ」

「そう、だね」

 相槌を打ちながらまさかと思う。


「……校外学習の自由行動の街、俺の地元なんだよ」

 まさかが事実になった。


「え? でも校外学習の話してるとき今まで一度もそんな事言わなかったよね?」

 街を良く知っているなら、自由行動のスケジュールを決めるときに教えてくれても良かったはずだ。

 そう思って疑問を口にしたけれど、すぐにそれが無理だったことを理解する。