いざメイクをするとなって、目を閉じて浅めの長い深呼吸をした倉木。

 次に目を開けると、別人のように真剣な目で俺を見た。

 真っ直ぐ見て来る焦げ茶の瞳に、射貫(いぬ)かれるような感覚に数瞬息をするのも忘れる。


 そのままされるがままになっていたが、流石に筆を使われたときにはくすぐってぇと文句を言った。

 でも「黙ってて」と短く静かに言われただけ。

 その目は静かな熱を持って俺の顔だけを見ていた。


 倉木のメイクを施す姿は、まるで神聖な儀式でもしているかのようで……。

 真剣に見つめる目。

 筆を取る、その指先まで神経を使った仕草。


 すべてに魅せられる。


 唇に直接触れられそうになって正気に戻ったけど、その真っ直ぐ射貫いてくる目に動きが止まる。

 あとはされるがまま。

 この神聖な儀式は、邪魔してはならないものなんだと思った。

 思ってしまった。