教室に着くまでは一言も喋らずに来たので変な空気が漂っていた。この静かな空気が嫌だった私は口を開いた。
「で、話したいことって何?」
そう聞いても反応しなかった。
「響希?話したいことって?」
聞こえなかったかな?と思いもう少し大きな声で話しかけてみた。
「あ、ごめん。ちょっと考え事してた。」
今日の響希はちょっとおかしいな。
「俺さ昨日から皆の未来が見えるようになったんだ。」
理解ができない。皆の未来が見えるようになった?それってどういうこと?すかさず聞いてみる。
「どういうこと?」
「昨日家から帰ってちょっと寝て起きたら親父の頭からもわもわが出ていてその中に親父の未来が描かれていたんだ。」
さすがに冗談だと思って
「そんなことあるわけないでしょ?もうちょっと上手に嘘つけないの?」
と少し笑いながら言うと、響希の顔が強ばった。
「嘘じゃないけど。」
え?じゃあ響希は私の未来が見えてるってことだよね。
「私の未来も見えてるの?」
「うん。」
「どうなってる?」
「直人と結婚してる」
直人は同じクラスメイトのイケメンくんだ。そういう響希の顔は悲しさで満ち溢れているようだった。実は私と響希は幼稚園からの幼なじみで、私は響希が好きだった。なんで直人?
「それって本当に直人くんなの?」
「まぁ、俺は納得いってないけど」
と笑う響希。すぐに真剣な顔に戻ったかと思うと
「俺、まなが好きだ。付き合ってください」