「このハンカチ、わたしの持ち物なのよ」


彼女が話し始める。


「きっと、誰かが、あなたの頭の上に置いて行っちゃったんだわ」


こんなに近い距離で、彼女の声を聞くのは。


「ご迷惑をお掛けしたわね。ごめんなさい」


この時が初めてだった。


「ずっと、これを捜していたの」


彼女は薄紅色のハンカチを愛しそうに見つめる。