「はぁ・・もう吸ってねぇよ。
 つーか、何でその事知ってんだよ。」

なんでって、
めちゃくちゃ脅してめちゃくちゃ口止めしてたじゃん。

「吸ってないなら良かった‥。
 百害あって一利なしだよ。」

「フッ・・
 語学のセンセイかよ。」

そんな事を話しているうちに
私の家に到着した。

「あっここ。私のうち。
 ありがとう。送ってくれて。」

「おぉ。じゃあな。」

コウくんはその場で立ち止まった。

「あ。杉元。」

自分の家の門戸をくぐろうとすると
コウくんに呼び止められた。

「ん?」

「ありがとな。勉強教えてくれて。
 また頼む。」

照れくさそうに少し俯きながら
コウくんはそう言った。

「うんっ! また、明日ね。」

ほら。やっぱり、優しい。
それに、意外とちゃんとしてる。

見た目は怖くても、
きちんとお礼を言ってくれる。
ここまで送ってきてくれる。

私が家に入るその瞬間まで見届けてくれる。

私は閉まりかけた玄関の扉から顔を覗かせると、
ポケットに手を突っ込んで、
こちらを見る彼が居る。

バイバイと手を振るとコウくんは手を上げて合図し、
振り返り元の道を歩いていった。

背の高い彼が
小さくなるまで、扉の間から見守った。