「ありがとね、日向」
「ううん、全然いいよ〜」
校門の前で自転車から降り、少し距離を開けて隣を歩く。
なんだか、今は真隣にいることが恥ずかしい。
意外と私も乙女なのかな?
なにより、もう慣れたけど女子の視線が痛いからね…。
自転車小屋に行くだけの少しの道でさえ、すれ違う女子みんなが日向に挨拶をする。
「日向くんおはよ〜!」
「おはよう〜」
いつもの笑顔でみんなに返していく。
そんな日向の表情を変えることのできる人物が一人だけいる。
「日向!おはよっ!」
聞き慣れたその声に振り返る日向の表情は、絶対に私には向けられない。
「おはようございます、葵さん!」
少し頰を染めらせ、一段と優しい顔をする私の知らない日向。