なぜか、まだ悲しみは湧き上がってこない。
心が追いついてないのかもしれない。
「そっか、先生これから教務室行かないとだからベッド好きに使ってね」
「うん、ありがとう」
そう言って、保健室をでていったかよちゃん。
いつも私が使ってるベッドにバタッと倒れ込む。
「………」
日向、今最高に幸せなときだよね。
これから、夜に部屋行くのも控えなきゃ…。
あ、そういえば辞書返せてないや。
右手に持つ辞書を見つめる。
名前 の所に少し汚い字で書かれた成瀬 日向という文字を指でなぞる。
「…日向」
そう言葉にすると、頬に何かが伝った。