『スナック綾子』は『サマンサ』とは真逆に位置している。
事務所に入ると綾子ママが薄い水色の着物を着こなし、佇んでいた。
「建ちゃん、急にごめんね。」
「大丈夫ですよ。いちお、オーナー代理なんで。」
「さっそくなんだけど…」
なかなかその先を話そうとしない綾子ママをジッと見つめていた。
一息ついて、綾子ママが俺と視線を合わせた。
「最近、キャスト達が次々と辞めちゃうの…古くから居る娘達は変わらずなんだけど…体入して、1週間は働くんだけど直ぐ辞めちゃうのよ…」
「体入荒し…?」
「えぇ…最近、そう実感してきたのよ…」
綾子ママが眉を寄せて困った表情をした。