それから二週間が経ち、この日私は朝からソワソワしていた。奏多さんが京都から戻ってきたのだ。

今は大広間で父と話をしている。なので私は二人分のお茶と茶菓子を準備しているところだ。

パパッと身だしなみを整えてお茶と茶菓子を大広間へ運ぶ。

「失礼します」

私が大広間へ入ると、話をしていた父と奏多さんがこっちを見てきた。私は二人の前にお茶と茶菓子を置く。

「ありがとうございます、桜さん」

奏多さんがニコッとして私にお礼を言ってきた。その微笑みに私はドキッとしてしまう。

「いえ……ではごゆっくりと」

それだけ言い残して早めに部屋を出た。奏多さんはいつも通りだ。それが何だか寂しかった。

「心を落ち着かせよう」

私は離れにある茶室に誰もいないのを確認すると、道具を使ってお点前(てまえ)を始める。

無心で茶筅(ちゃせん)をシャカシャカ回す。

「顔が強張(こわば)ってますよ。もっと楽しそうにしなきゃ」

茶室には私しか居ないはず……

私はびっくりした表情で声のする方に顔を上げると、入り口の障子が開いていて、そこにはニッコリしている奏多さんが居た。

「奏多さん……」

何で茶室(ここ)に?と思いながら呆然としていると、奏多さんは障子を閉めて私の近くまでやって来た。