「次こそ良縁があるといいですね。あっでも……」

「でも?」

奏多さんは気になるところで言葉を止めた。少し言いにくそうな感じに見えるのは気のせいかな。

「気に障ったらすみません。今のままだと何回お見合いしても上手くいかない気がします」

「えっ、どうして?」

奏多さんはどうしてそう思うのだろう。もしかして私に何か問題がある?

「多分、桜さんの心の中に想い人がいますよね?彼の事を吹っ切らないと厳しいような気がします」

「ななな、何でその事を!?」

奏多さんに指摘され、私は激しく動揺した。確かに私には密かに好きな人がいる。でもその事を今まで他人に言った事もないし、バレないように気をつけていたはずだけど。

「私……好きな人がいるって顔に出てましたか?」

恐る恐る聞いてみると、奏多さんは優しい表情で答える。

「いえ、そんな事はありませんよ。僕が少し敏感に感じとっただけです…お相手の名前を出しても?」

「……どうぞ」

「蒼志君……ですよね?」

正解。誰にもバレない自信があったんだけどな。

「この事は誰にも言わないでもらえますか?」

「もちろんです」

奏多さんはクスッと笑った。蒼志の前では素直になれないけど、奏多さんは何でも話せちゃう雰囲気を持っている。

だから奏多さんにはよく相談に乗ってもらったりしていて、私にとってお兄さんみたいな存在だ。