「桜さん、戻られたのですね。おかえりなさい」

「はい、先程お見合いから帰りました。奏多さんの茶道体験教室、今回も評判良いみたいですね」

「僕なんてまだまだです。良かったらお茶を飲んで行かれませんか?」

「はい、ありがとうございます」

私が正座すると、奏多さんはお点前(てまえ)を始めた。

手首のスナップをきかせて茶筅(ちゃせん)をシャカシャカとよく振る。サラッとした前髪が少し揺れ、凛としたその姿に私は思わず魅入(みい)ってしまった。

そして私の前に茶碗をスッと差し出す。

「お点前頂戴します」

差し出された茶碗の手前に手をつき、一礼してお点前を頂く。きめ細かい泡に仕上がった抹茶は軽くて柔らかく、味もまろやかだ。流石だな、奏多さん。

「今日のお見合いはどうでしたか?」

「残念ながら良縁ではなかったみたいです」

「そうですか。その着物、桜さんにとてもお似合いですね。大和撫子という言葉がピッタリです」

「あ、ありがとうございます」

奏多さんはまたニッコリと甘いフェイスでストレートに私を褒める。私は照れてしまい、恐らく熱帯びた頬は赤く染まっていると思う。

この言葉、蒼志にも聞かせてやりたいわ。