「か、からかったんですか?」

私は奏多さんから顔を離し、バクバクしている心臓の上に手を当てる。

「俺の事避けた仕返しや。でも危なかったわ。桜さん雰囲気に流されるし、ほんまにキスしそうになった」

奏多さんはいつもと違う意地悪そうな笑顔を見せた。

奏多さんってこんな人だったっけ?

「とりあえず歩こうか」

そう言って奏多さんは私に手を差し出してきた。手を繋ぐって事かな?いや、またからかっているのかも。

私が差し出された奏多さんの手をジッと見ていると、奏多さんがクスッと笑い私の手を取った。

そして手を繋いでまた歩き始めた。

「桜さんは男慣れしてないから、この先変な男に捕まりそうでやっぱり心配やな。すぐ雰囲気に流されそうやし」

多分さっきのキス未遂の事だよね。あれは奏多さんだったから……とは言えない。

それよりも手を繋いだままでいいのかな。さっきから胸がバクバクし過ぎて奏多さんに聞こえちゃいそう。

繋いでみて初めて分かったけど、奏多さんの手って私の華奢な手とは違って大きくて少しゴツゴツしてて……嫌でも男性として意識してしまう。

「さっきからどないしたん?やけに静かやけど」

「いえ、別に。今日は話し方が違うなって思って」

「そやな。さっき友達と酒飲んできたから言葉の使い分けが上手くできてへんかも……ちょう待ってな」

奏多さんはニッコリ微笑みながら私を見た。いつもの話し方がいいっていう意味じゃなかったんだけど……気を悪くさせちゃったかな。