「すみません、少し失礼します……もしもし」

私に断りを入れて奏多さんは電話に出た。恐らく相手は『マナ』さんだ。私は帰るに帰れず、奏多さんの電話が終わるのを待った。

奏多さんは私から少し離れた所で話をしているけど、やっぱり奏多さんの声は耳に入ってくる。

『マナ』さんと話す奏多さんは私と話す時とは違って、丁寧な敬語ではなく自然な関西弁で話していた。

なんか奏多さんが違う人に見えて寂しくなり、奏多さんが視界に入らないよう私は向きを変える。

「すみませんでした」

電話を終えた奏多さんは、関西弁からまた敬語男子に戻り私の元へ戻って来た。

「いえ」

電話の相手は彼女ですか?って聞こうかと思ったけど、言葉が声にならなかった。

「ちょうど家元に用事ができましたので、やっぱり家まで送ります」

奏多さんはニッコリと甘いフェイスで笑い私を見る。その笑顔に私はもう断る事は出来なかった。

「ありがとうございます」

そして私は奏多さんと一緒に夜の道を歩き始める。