食事が終わり車に乗り込む。夜まで時間があるので、水族館へ行く事になった。

「ちょっと寄り道してええかな?」

「はい、どこに寄り道するんですか?」

「さて、どこやろな」

奏多さんは行き先を言わないまま、どんどん車を走らせる。外の風景を見ると見覚えのある建物ばかりだ。

っていうか、この道は……もしかして華月家(うち)に戻ってる?

奏多さんの顔をパッと見るけど、ニコッと笑顔を返すだけだった。

そして着いた先は華月家(うち)ではなく、何故か柊木呉服店だ。何か用事かしら?と思ったけど、奏多さんに私も一緒に店に入るように手招きされ、奏多さんの後に続いて店に入った。

「いらっしゃい……って奏多さんと桜?」

店内にはもちろん蒼志がいて、私と奏多さんが一緒にいるのを不思議そうに見てくる。

「こんにちは蒼志君。少し話がありまして立ち寄らせていただきました」

「……っていうか、何で桜と一緒何ですか?」

仕事の手を止め、蒼志は奏多さんの前に立つ。にこやかな奏多さんとは対照的に、蒼志は若干睨むような感じで奏多さんを見ている。

「僕達は家元からフラワーパークの招待券を頂いたのでデート中です」

「へぇ、それでここに何の用すか?」

何だか二人の険悪な雰囲気に私は一人ハラハラしていた。確かに奏多さんは何の為にここに来たのだろう。