自分に素直で、周りに流されずに己の道をゆく人。
 良くも悪くもただそれだけ。

 ミゼルが目指す「自分なりの生き方」を実行しているのがヘンリーなのだ。

(ヘンリー様といると勉強になりそう)

 本当は、マリアヴェーラに紹介したら接触を絶とうと思っていたけれど、ミゼルはもう少しヘンリーと一緒にいたいと思ってしまった。

「私、おばあさまに何かいい方法がないか聞いてみます。記憶喪失になった方の看病をしたこともあるそうなので」

 わざわざ会う口実を作るミゼルに、ヘンリーはもの憂げな視線を送る。

「君のおばあさまは、オレのことをよく思ってないはずだよね。教えてくれるかな?」
「大丈夫ですよ。いつも私の力になってくださっていますから」
「それなら頼もうかな。いつ会える?」

 ミゼルは毎日休日みたいなものなので、会うのはヘンリーが休みを取れる来週の水曜になった。

(どうしてでしょう。すごく楽しみ)

 伯爵家に到着して馬車を降りたヘンリーは、屋敷にあがることなく去っていった。
 見送りもそこそこに部屋に戻ったミゼルは、すぐに祖母へ手紙を書いたのだった。