驚いて立ち上がる。見れば、ソファには先客がいた。黒いコートジャケットを着たまま昼寝していたのは、第二王子のレイノルドだった。
 マリアが乗っかってしまったお腹を片手で押えて、びっくりした顔をしている。

「急に何かと思ったら……。ここで何してる」
「それはこちらの台詞でしてよ! 庭園に行かずにご令嬢たちの控え室でお昼寝だなんて、暴漢にまちがえられても仕方がないでしょうに」
「ご令嬢たち……? ここは令息の方の控え室だ」
「えっ?」

 辺りを見回すと、庭園に移動するまえに入った応接間とは、家具の配置が異なっている。壁紙やシャンデリアが同じだから油断していた。
 入る部屋をまちがったのはマリアの方だ。

「わたくし、なんて失態を……!」
「ふっ」

 起き上がったレイノルドは青ざめるマリアを見て吹き出した。