「……わたくしには可愛らしすぎたわね……」

 手持ちのドレスに着替えたマリアは、姿見を見て溜め息をついた。
 流行している小花柄のドレスをデザイナーに勧められて注文したが、持ち前の高貴な外見には似合っていない。

 自分に似合うのは、花の一輪、一輪が際立つほど大きくあしらわれた大柄だと分かっていた。だが、マリアだって可愛らしいドレスに憧れがある。

 先ほど虐めてきた令嬢たちが着ていたような、淡い水色、ピンク色、黄色といった膨張色。大きく広がったプリンセスラインのドレス。リボンを多用した子どもっぽいデザインを着こなして街を歩けたら、どれほど楽しいことかと思ってきた。

「マリアヴェーラ様、別のドレスもご用意してございますが……」

 落ち込んだ様子を見て、侍女が化粧箱からキツい紫色のドレスを引き出してくれた。マリアは、少し迷ってから、このままでいいと告げる。