彼女がしたい恋とは、どんな形であれば『叶った』と言えるのだろうか。

「なあ、ヘンリー」
「なあに、王子サマ」

 三つ目のチュロスに手を出すヘンリーに、レイノルドは小声で尋ねた。

「本当の恋って、どうやったらできるんだ」
「オレに聞く? 王子サマが長年こじらせてたのは何なわけ」
「恋だと思っていた。だが、俺の思う恋と、マリアヴェーラの思う恋がちがったら、結婚へと推し進めても彼女は幸せにならない」

 深いため息をつく悪友を見て、ヘンリーは思った。

(男にもマリッジブルーってあるんだ……)