だが、レイノルドは気づいていた。自分を連れているとナンパの成功率が上がるため、ダシに使われていると。

「俺は、マリアヴェーラ以外の女に興味ない。何度いったら分かるんだ、お前は」
「王子サマこそ、何度説明したら分かってくれるわけ? どんなに片思いしても叶わない恋はあるんだって」
「それはもういいだろ。俺の恋は叶った」
「叶ってなくない?」

 ヘンリーは、休憩用の軽食を漁って、ハート形のチュロスを一つつまんだ。

「想いが相手に届いて、お付き合いに発展したことを『恋が叶った』とみなしていいなら、これを機にお別れしたって未練はないはずだよね。でも、王子サマはそうじゃないよね。あの公爵令嬢と、永遠に続いていくような約束がほしいんでしょ。だから、お付き合いに乗じて結婚しようとしてる。てことは、王子サマの恋はまだ叶ってないんじゃないの?」
「叶ってない…………」