「――それから一切の連絡がありませんのよ」

 溜め息をつくと、クレロも荒っぽく息を吐いた。

「酷いですね……。結婚にケチを付けられて不安がっている婚約者にフォローも入れずに、ただの妃候補と共に行ってしまうなんて。同じ男として信じられないな」

 クレロが不満を口にしてくれたので、少しだけ溜飲が下がった。
 ネリネの預言もたいがいにしろと思ったが、マリアの胸に引っかかっているのはレイノルドの対応の方だ。

 あのとき、彼がネリネではなく、マリアの腕をつかんで、国王に弁明に行ってくれたら。
 たぶん、こんなにモヤモヤはしなかった。

「聞いてくださって感謝いたします。誰にも吐き出せなくて苦しかったのですわ」
「……貴方は……」