「残念ながら、全て外れですわ。相手の結婚相手に名が上がっていた女性に、喧嘩を売られましたの」

 マリアはチュロスに噛みついた。
 カリッとした食感と甘みは、目がくらむほど美味しい。揚げ物は体型維持の敵だが、今日ばかりは知るものか。

「その女性は聖女で、わたくしと第二王子が結婚すればタスティリヤ王国が滅びると預言されましたわ。わたくしは嘘だと思いましたが、レイノルド様は深刻そうな顔をしておられました。国王陛下にお目通り願いたいと、相手を連れて宮殿のなかに戻ってしまわれて――」

 あの預言のあと。
 レイノルドは、抱きつくネリネを鬱陶しそうに振りほどくと、マリアに「国王に説明しにいく」とだけ告げて宮殿に向かった。

 ネリネの腕をつかんで。
 マリアをその場に一人残して。