吐息にあわせて震える長い睫毛や、淡い色合いに染められた唇の隙間に、意識が吸い込まれそうだ。
 濃い化粧をやめて、以前よりさらに綺麗になった気がする。
 綺麗というより可愛いか。元より美しすぎるマリアの場合は。

「あんたは無意識だろうが、これ以上かわいくなられたら、俺がどうかなりそうだ……」

 罪作りな恋人の頭に、そっと頭をもたれさせて目を閉じる。
 ただ寄り添っているだけで幸せだ。

 少し前までは、長年の片思いが実るなんて思っていなかった。
 偶然と奇跡の手を借りて、あとは、ちょっとずるい真似をしてマリアを手に入れようとしたけれど、最後の最後でマリア自身がレイノルドを選んでくれなければ、恋人にはなれなかっただろう。

 だからレイノルドは、これからの人生をマリアと生きていくためなら、どんなに過酷なスケジュールを課せられても耐えられる。