ろくに聞いていなかったマリアは、手を口元にかざして愛想笑いした。

「質問は後日にいたしますわ。いまお聞きした内容をレイノルド様にお伝えして、ご意見をいただきたいのです。参考までに、その指示書をお借りしてもよろしくて?」
「では、こちらを。殿下とご覧になりましたら、お近くの側近にお戻しください」
「分かりました。宮殿にお戻りになったら、庭にティーセットを持ってきてほしいと伝えていただけますか?」

 お茶の準備を頼んだマリアは、道を戻って東屋を目指した。
 レイノルドが東屋のベンチに横たわって寝息を立てていたので、物音を立てないように端っこに座る。

(ここ、涼しいわ……)

 屋根や柱につたった緑が自然のカーテンとなって、陽光と暑さを遮断している。