こんな些細なことがうれしいなんて。恋って、ほんとうに素敵だ。

「次は、軽食をご用意するテントのご相談です――」

 側近が前を向いて歩き出したので、マリアはレイノルドに耳打ちした。

「説明はわたくしが聞いて、あとでお伝えしますわ。あちらに東屋があるので休憩なさっていてください」

 生け垣の間にある東屋は鳥籠のような形をしていて、多いしげった蔦が屋根まで絡んでいる。

「悪い、頼んだ」

 そう言って、レイノルドはふらふらと東屋に向かった。
 マリアは、第二王子がいないと気づいた側近に事情を説明して、庭の奥に進んでいく。軽食を提供するためのテントを張る計画は、右の耳から左へと聞き流して。