大粒の宝石ならジステッド公爵家にいくらでもある。
 マリアの容貌に似合うのは、女店主が勧めるものだとも分かっている。

 しかし、心から欲しいと思うのは、出入り口近くに置かれている、細やかで小粒なアクセサリーの方だ。

「――俺は、これが見たい」

 押しの強い女店主に困っていると、急にレイノルドが口を出してきた。
 彼が指さしているのは銀細工のブローチだ。

 スズランの形になっていて、花の部分に小粒のダイヤが嵌まっている。隣には、同じ意匠のネクタイピンも並んでいた。

 女店主は、マリアへの押売りを中止して、レイノルドの方にすり寄った。