マリアとレイノルドは市場を見て回った。
 布を広げただけの露天、柱に帆布をかけて作った小屋には、庶民の手が届くような安価な品物が並ぶ。

 アクセサリーを扱う市だからか、行き交う客はカップルが多い。
 手を絡ませたり、肩を抱いていたり、人目をはばからずにキスをしたり……。

 彼らの熱々ぶりを目にするたび、マリアは「ひっ」と短い悲鳴を上げて、レイノルドに笑われた。

「お貴族育ちには、刺激が強かったな。どこかの小屋にでも入るか」

 二人は、市場のなかでもっとも設えが上等な店に入った。
 他の店よりは高級志向らしく、ケタが一つ違う値段の宝石が並んでいる。

 ダイヤにサファイヤ、ルビー、エメラルドなど、小粒ではあるが透明度は高い。
 オリジナルの台座が花や羽根を模してあり、大人しめの可愛らしさがあった。