「で、こんな時間に掃除?」


女子達の前で、珍しく冬哉がにっこりと微笑む。

だけどその目は全く笑ってはいない。


「え、あっ、えっと……」


未だ状況が把握出来ないといった感じの友永さんが、言葉を探しながら口を開く。

すると、冬哉はバケツをその場に落とすように投げ捨てて──。


「……っ!?」


友永さんの胸ぐらを掴んで、壁に追いやった。


「前に言ったこと、忘れたりしてないよな?」


普段女の子を突き放すときの表情とは、比べ物にならない。

ドスの効いた声に、上から鋭く友永さんを見下ろす目。


久しぶりに見た、冬哉が本気でキレた顔。


「ご、ごめんなさっ……」


さすがの友永さんも顔を真っ青にして、零れ落ちそうなくらいの涙をためて。

か細い謝罪の声に、胸ぐらを掴んだ手を冬哉がゆっくり離すと、みんな慌てた様子で逃げ去っていった。