「そんなこと、言われなくてもわかってる。私はただ、冬哉くんが誰かのものになるのが嫌なの。だから……」
一歩近付いて、友永さんもしゃがみ込むと、あたしの顎をクイっと持ち上げた。そして、
「本当はあんたのことが一番気に入らなかったの」
今までに見たことのないあくどい顔でニタッと笑う。
その後ろには……バケツを持った女子。
「っ……!」
友永さんがパッと立ち上がって、次の瞬間何が起きるか容易に予想出来た。
だけど逃げる余裕もなく、あたし達はぎゅっと目を閉じる。
その予想通り──。
バシャッと勢いよく落とされた水音。
……にも関わらず、あたし達に散ってきたのは小さな水しぶきだけだった。
あ……あれ……?
不思議に思ったあたしはそっと目を開く。
すると、ずぶ濡れになっているのは友永さん達の方だった。
そして──。
「あ、ごめん。重そうだから持ってあげようとしたんだけど、手元狂ったわ」
さっきまで女子が持っていたはずのバケツを片手に立っていたのは……冬哉。