「でも、私はどうしてこの世に残り続けているのか分からないし、どうして私が霊になってしま
 ったのかも、曖昧で何とも言えなくて・・・」

やっぱり、若干そんな気はしていた。
〈怨念〉の厄介な点は、霊の自我を壊すだけではない。〈怨念〉は、影響を受けた例の『記憶』ですらも壊してしまう。
自我は戻れるパターンがあっても、記憶は戻らない。何故かは分からないけど。
改めて、自分の存在がいかに曖昧なのかを悟ったユキちゃんは、今にも泣き出してしまいそうな程、悲しい顔をしていた。
可哀想ではあるけど、霊である以上、〈怨念〉の脅威からは逃れられない。どうしても逃れたい場合は、人を遠ざけるしかない。
でも、そもそも〈怨念〉の知識すらないのが普通だ。ユキちゃんだけではなく、霊は知らず知らずの間に、生きている人間達の『負の念』によって蝕まれてしまう。

「そこから探すのが普通だよ。『成仏』っていうのは、読んで字の如く、

 『仏』に『成る』っていう事。
 『成る』っていうのは、『別の姿へと成る』事。

 〈灯籠〉は、仏になる『一歩手前』の段階なんだ。
 まぁ、そこから無事に成仏まで辿り着けるかは、本人次第なんだけど。

 ・・・で、どうする?
 断れば、君はまた〈怨念〉に縛られながら、私よりももっと本格的な霊能力者に、遅かれ早か
 れ滅せられる。断った段階で、私達は君との関係を断つ。
 私は『強制』はしたくない。君自身で考えて、君自身で意見を述べてほしい。」

「・・・・・ねがい・・・
 ・・・お願い・・・

 私は苦しめられたくない・・・!!
 私は苦しめたくない・・・!!
 私は、確かに酷い事をしてしまった。記憶はないけど、今でもその感覚は残っている。
 でも、そんな私の願いが叶うのなら・・・!!!

 この世界を絶って、天に昇りたい!!!」