「し、信じられない……!!」

恐怖と憤りと失望と様々な感情がグチャグチャに絡み合ってうまく思考が働かない。

誰もいない体育館にポツンと一つ残された部バッグとシューズ袋を掴んで駆け出す。

ただ先生にアドバイスをもらいに行っただけなのに。

ギュッと唇を噛む。

折原先生は自身もバスケの経験者で前任校で弱小の女子バスケ部を県内トップクラスに押し上げた実績がある。

実力主義で練習も厳しいが部員に寄り添う一面も併せ持ち、あたしはそんな先生を尊敬していた。

でも、さっきの態度は……?

あの体の触り方はバスケの指導を行っているようには思えなかった。

むしろ、電車の中の痴漢のような手の動きだったように思う。

先生は既婚者で子供もいるし、女子高生に手を出すはずなどない。

だとしたら、あたしの勘違いなんだろうか。

本当にただのスキンシップだったんだろうか。

考えても先生の頭の中は覗けないし、憶測でしかない。

胸を押して「スキンシップで先生はあたしにキスしようとしたんですか?」はやりすぎだったかもしれない。

勝手に先生の行為に嫌悪感を覚えて突き放してしまったんだとしたら、失礼極まりない。

「明日先生に謝らなくちゃ……」

私はぽつりと呟いた。