「遊びで、ちょっとイチャイチャしたかな」
「イチャイチャ?やったの?もう」
「やってないよ、手前の手前くらい」

私は缶チューハイのプルを開けて一口流し込む。
スッキリとした甘味と酸味が混ざり合う桃の風味が少し場の空気をごまかしてくれそうな気がした。

「キスした?」
「キスは、したかな」

私の回答に、なんとも言えない表情を悠人は見せる。

「誰にも言わないでね」
「言わないよ」

悠人は葡萄サワーを一気に三口くらいゴキュゴキュゴキュと飲む。
そして「あー」と低い声を漏らした。

悠人と目が合う。
視線がテーブルの上あたりで絡み合うように交わる。

悠人は私にとってニュートラルなポジションだと思ってた。
だけどそれは全然違ってた。

「悠人はさ、もし私と付き合って別れたらさ、今までどおりでいてくれる?」
「知らないよ、そんなの」

悠人は笑う。

「じゃあ、サークル内恋愛はやめようかな。もう疲れた」

私はため息を吐くようにこぼす。

「何も始まってないじゃん」
「狭すぎるよ、この世界」

背もたれに最大限に寄りかかる。

「ちょっと懲りた」

悠人がジッと私を見ているのが分かる。
何を思ってるんだろう。
こいつ馬鹿だなあ、とか思ってるのかな。