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「琴葉、今日も一緒に帰ろうよ」


放課後になり、琴葉に声をかけると琴葉は申し訳なさそうな顔を浮かべた。


「ごめん、今日デートなんだ」


顔の前で両手を合わせ、まるで拝むようなポーズで言う琴葉。


デートという聞きなれない単語に一瞬言葉を失ってしまった。


同時に、そういえば琴葉には彼氏ができたんだったと思い出す。


「そ、そっか」


「本当にごめんね。彼、待ってるからまたね!」


琴葉は早口にそう言うと急いで教室を出て行ってしまった。


あたしは唖然としてその後姿を見つめる。


彼氏ができたって本当だったんだ。


今更ながら寂しさに似た感情がわきあがってくる。


その寂しさの中には多少の悔しさも含まれていた。


どうして琴葉だけ。


しかも、わけのわからないドライブスルー彼氏なんか使って彼氏ができるの?


そんな感情がわいてきて、慌てて左右に首を振ってかき消した。


彼氏の作り方がどうであれ、琴葉は一歩足を踏み出したんだ。


その結果彼氏ができたのだから、なにもしてない自分がとやかく言う権利はない。


「あたしも帰ろう」


ポツリと呟き、1人で教室を出たのだった。