下には弟と妹がいるのに、働かない父親。


母親がなにをしているかはわからないが、離婚してしまっている可能性もある。


真里菜は深く頭をたれて何度も何度もお願い事を口にする。


それは本気の願いだった。


自分も、家族も生きていくために必要な願い。


それを見ていた咲が一瞬眉を下げた。


さすがに、友人の切実な願いを見て胸が痛んでいるのかもしれない。


5分間ほど頭を下げたままだった真里菜の肩に、咲が手を置いた。


「もう大丈夫だよ。きっと叶えてくれるから」


そう言うと真里菜はようやく顔を上げた。


その目にはうっすらと涙が浮かんでいたのであたしは驚いた。


鬼のような女でも涙を流すことがるのだと驚愕する。


人を拷問して殺して絶対様にさせたくせに、自分の貧困がそんなに悲しいことなのか。


こいつらにとってはそうなのかもしれない。


いじめられっこ1人の命よりも重たいものなんて沢山あるのかもしれない。