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放課後になり、あたしは真里菜と光に挟まれるようにして廃墟へと向かっていた。


先頭を歩いている咲はさっきからひっきりなしにスマホをいじっている。


付き合いはじめたばかりの大崎くんからメッセージがきているのだそうだ。


時折スキップまでしながら歩く咲の姿を見ながらも、あたしの頭は美緒で一杯になっていた。


どうか逃げていて。


絶対様でもなんでもいいから。


もうこいつらの願いを聞き入れるようなことはしなくていいから。


その願いもむなしく、廃墟の中には美緒がいた。


昨日と同じように椅子に座り、灰色の濁った目をうつろに泳がせている。


その姿に胸が痛くなった。


どうして逃げてくれなかったの?


絶対様になってしまったから、逃げられなくなったの?


聞きたかったが、咲たちの手前なにも聞くことはできなかった。


聞いたところで、返事はなかったかもしれないけれど。


呆然として美緒を見つめていると、真里菜が美緒の前に膝をついた。


まるで神様にお願い事をするときのように手を組み、目を閉じる。


「どうか、お金をください!」


それは切実な願いだった。


制服も、私服もすべて誰かのお古を使っている真里菜。