「ミレイナはわたくし達よりもっと身分違いだから悩みも多いでしょう? でも、応援しています。陛下は、ミレイナをひとときも離したくない様子だとよくウォルトが言っているのよ」

 にこにこしながら話すスザンナになんと返せばよいかわからずに、ミレイナは曖昧に微笑んだ。

『彼が何を幸せに思うかは、わたくしが決めることではなくて彼が決めることだわ』

 これほど今の自分の心に突き刺さる言葉は、他にないだろう。

 ジェラールはひたむきにミレイナに愛の言葉を囁き、態度でも愛情を示してくれる。そして、再三に亘って『妻になってほしい』と伝えてくれた。
 それに対しミレイナは、自分などでは相応しくないと勝手に卑屈になって逃げ出し、けれど離れる勇気もなくてどっちつかずになっている。

(私、本当にだめだな)

 ミレイナは、膝に置いていた手をぎゅっと掴む。

(ジェラール陛下は『私が竜王妃になるために頑張ってみます』って伝えたら、喜んでくださるかしら?)

 ミレイナは竜王妃としての知識も作法も何ひとつないし、実家の後ろ立てもない。寿命だって短い。

(でも、それでもジェラール陛下が望んでくれるなら──)

 彼のために、自分も精一杯頑張りたい。
 少しでも長く、側にいたい。
 そう思った。