「実は、わたくしとウォルトは幼なじみで小さな頃からお互いをよく知っているの。私はウォルトが小さな頃から好きだったわ。だって、かっこいいし優しいもの」

 スザンナは少し照れたようにはにかむ。

「じゃあなんで断ったの?」
「ウォルトの実家のオルコット家は由緒正しい侯爵家だけど、わたくしの実家は貴族といっても、男爵だから。皇宮区の侍女になれたのもウォルトが口添えしてくれたお陰なの──」

 少し困ったように眉尻を下げたスザンナはぽつりぽつりと事情を話し始める。
 その話からミレイナは、スザンナはウォルトを好きだったものの身分違いだと思い気持ちを受け入れるのを迷っていたようだと理解した。

「わたくしはウォルトに相応しくないって思ってずっと逃げていたけれど、あるとき悲しそうな彼の表情を見て違うって気付いたの。彼が何を幸せに思うかは、わたくしが決めることではなくて彼が決めることだわ。だから、わたくしは彼を幸せにするために頑張ることにしたの」

 その言葉を聞いたとき、ミレイナはガツンと頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
 まるで、自分に向けられた言葉のように感じたのだ。

 彼に相応しくないと決めつけて逃げているのは、ミレイナも同じだ。