明日、仕事だし、と汐音は言ったが、
「朝早く送ってやる」
と言いながら、求は、こめかみにキスしてくる。

 いやいや、まあまあ、と二人は揉めた。

 いつもより強引な求を押し返しながら、
「もう~っ。
 酔ってませんか? 加倉井さんっ」
と汐音は言ったが、

「求」
と求はまっすぐ汐音を見つめ、言ってきた。

「よ、酔ってませんか? も、……求さん」

 汐音がそう呼びかえると、求は、よし、と頷いた。
 離してくれるのかと思いや、抱き上げられる。

「酔ってなどいないぞ。
 俺の言動はなにもおかしくない。

 お前こそ、おかしいじゃないか。

 うさ耳は何処に行ったんだ、汐音っ」

「い、いや、最初からありませんよ……」

 やっぱり酔ってますね……とあまり呑んでなかった汐音は正気のまま思う。