そのあと、片側がちょっぴり焦げたホットケーキを(さかな)に二人でワインを呑んだ。

 甘い辛いで、ちょうどいいな。
 ホットケーキにワイン、なかなか合う。

 そう思ったあとで、汐音は、酒の肴からの連想か、ふと、ぐるぐる回るイカのことを思い出し言ってみた。

「そういえば、結局、イカ見に行ってないですね~」

「そうだな。
 一気に話が進んで忙しかったからな。
 でも、俺はこの間、イカ見てきたぞ」
と言って求が笑う。

「えっ?
 ひとりでですかっ?」

 ひとり、呼子や京都に行っている求を想像し、汐音が驚くと、汐音の妄想の気配が求にたどり着いたらしく、求は笑って言ってきた。

莫迦(ばか)
 見たのは百貨店だ。

 結納セットを見に行ったから」

 そ、そういえば、もう結納でしたね、と汐音はなんとなく照れて俯く。

 結納品にはイカの干物や昆布なども入ってたりもするから、求はそれを見てきたのだろう。

 いやでも、ほんとに未だに信じられないな。
 私と加倉井さんが結婚するなんて……。

 そう汐音は思っていた。

 あのとき、おむすびを握ってなかったら、今、加倉井さんと此処でこうしてることもないんだよな。

 人生って不思議なもんだな、と思ったとき、求が汐音の頬にキスしてきた。

 いきなりだったので驚いて逃げかけた手を求につかまれる。

 そのまま押し倒されかけ、汐音は思わず抵抗してしまう。

「え、えーと。
 明日早いし、今日はもう帰ろうかな~なんて……」