「不協和音だよ~。
 雑貨の話に適当に相槌打ってたらさ~」

 夕方、武志がスマホを見ながら、そんなことを言い出し、求はパソコンから顔を上げた。

 いや、仕事中、なにやってんだ、お前……、と思ったが、落ち込んでるところを叱っても悪いかと思い、黙る。

「女の子と話し合わせるの、話題によっては難しいよね~」

 そういえば、汐音と話し合わせるのが難しいと思ったことないな、と気がついた。

 照れて沈黙してしまうことや、今、なにが起こってるんだと思って、絶句してしまうことはあるのだが……。

 なにせ秘密の多い奴だからな。

 ……そういえば、汐音の部屋に行ったとき、あいつ、畳をひょいと抱えてたな。

 謎の仙人に鍛えられたと言っていたが。
 鍛えたのは、一緒に道場に通っていた繁さんというか、渡真利さんらしい。

 なんてことしてくれたんです、渡真利さんっ。

 気軽に押し倒せないじゃないですかっ、と求はつい、渡真利を恨む。

 まあ、気軽に押し倒すような度胸はないのだが……。