「とりあえずボール置くよ」と2つとも戻し終えたところで、近くにあったベンチに座らされた。
「なに、どうしたの?」
座るのは卓球ブースから見えないほう。
涼くんがわざわざ壁になってくれているようだった。
「…えっと、たいしたことはないんだけどね。」
うん、と頷きながら心配そうな表情で私の顔を覗く。
「私、中高一貫校の出身なんだけど、高校はそこじゃなくて今の高校来たんだよね。
卓球のところにいるのが、出身校の高校の制服で。
…知り合いだったら、やだなって。
会いたくないって思っちゃって。」
ポツリポツリと出てくる言葉に、涼くんは無言で頷くと。
1度だけ、ゆっくり背中を撫でられる。
それが「大丈夫」と言ってくれているようで、ちょっと泣きそう。