体の震えが止まらない。

 涙もこぼれっぱなし。

 顔を濡らす雫を拭くこともせず、ただただお兄ちゃんの優しい文字を見つめていると、フェンス越しのむち君が私の鼻を指でピンっと弾いた。



「っ、痛いっ」


「望愛には好きな奴がいるだろ?」



 ひゃっ??

 いきなり……何の話??



「すっ…好きな人なんて……いないよっ……」


「うろたえすぎ」


「……だからっ」


「ば~か、俺を騙せると思ってるわけ?」



 むち君、私の瞳の奥の奥まで鋭い目で貫かないで。

 私の胸の奥の奥にしまい込んだ思い、引っ張り出そうとしないで。

 

「望愛の心の中には俺と出会う前から、大好きな奴が居座ってるんじゃねーの?」



 そんな話はやめてよ!

 私はもう、恋をしないって決めてるんだから!