「大地君の大事な物って?」


 何のこと?


「鈍感な望愛には、一生わかんない話か」



 わかんないよ。

 わかんないから……


「むち君、教えて」


「ヤダね」


「イジワル」


「っていうか、オマエが帰ってくるの、わざわざ待っていてやったんだけど」


 むち君は、大きく伸びをすると


「望愛にこれ、渡そうと思って」


 手に持っていた1冊のノートを、フェンス越しに私に手渡した。