近所に聞こえているくらいの大声を張り上げた大地君。

 苦しそうに顔を歪ませ私を睨んでくる。


「譲さんのせいにして恋から逃げてる自覚、望愛ちゃんには無いの?」


 だから、そんなことは……


「自分の弱さを俺の大事な人に塗りつける望愛ちゃんなんかに、うちの店のモンブラン、一生食べさせてあげないから!」


 私に愛想をつかした顔で大地君は自転車にまたがると


「明日の朝は迎えに来ないから!」


 シャーベット並みに冷たい声を地面に落とし、自転車で去ってしまった。




 
 恋から逃げてるかぁ……



 誰かを好きになることを、私は小6で封印した。

 それがお兄ちゃんへの罪滅ぼしだったから。

 だから今の私には、自分の中にある秘めた想いが『友情』なのか『恋心』なのか、それさえ判断できないでいる。