「お兄ちゃんは大地君にも優しかった?」


 望愛ちゃん、微笑まないで。


「リクが弟だったら毎日キャッチボールするのにって、よく話してくれたよ」



 だから優しく微笑むの、やめてってば。

 その笑顔、譲さんと重なっちゃうんだから!





 俺は高校で望愛ちゃんと過ごしながら、必死に押し殺してきた思いがある。


 望愛ちゃんといると、譲さんを思い出すんだ。

 望愛ちゃんが笑うと、譲さんと話してる時の高揚感が味わえるんだ。



 一人で譲さんのことを思い出すと苦しくなるのに、望愛ちゃんと一緒ならなぜか心が痛まない。

 復讐で近づいたことすら忘れて、本気で笑っちゃうことばっかり。


 そんなとこで笑うのって望愛ちゃんに突っ込みながら、譲さんと笑いのツボまで一緒なの?って、つい噴出しちゃう自分がいて。


 たまに錯覚する。

 俺が今話してるのって、望愛ちゃんだよね?

 望愛ちゃんに乗りうつっている、譲さんじゃないよね?って。