「俺にとって譲さんは、とてつもなく大事な人だったんだよ」
さっきまで凍りそうなほど冷たい瞳をしていたのに、急に優しく微笑みだした大地君。
「唯一の理解者で、こんな俺のためにケンカまでしてくれたんだ」
口元を緩め、お兄ちゃんの写真を撫で始めた。
「俺ね小学校までイジメにあっててさ。特に野球チームからの暴力が酷くて」
「イジメ?」
「初めてモンブランを買いに来た譲さんが俺の体のあざを見つけて、話を聞いてくれてね。チームメイトと親たちが揃う試合の場に、怒鳴りこんでくれたの」
お兄ちゃんはそういう人だった。
悪を憎み、困っている人を放っておけない人。