「ご、ごめんね…」

「ぜったいゆるさない!とーかちゃんなんて大っきらいだ!」


泣かせてしまって悪いと思って謝ったのに、きらいだと言われた。

人からきらいだなんて言われたのは初めての経験だった。悲しかった。だったらこっちも大きらいだと思った。


それ以来、まるで磁石。同じ気持ちを抱く同極同士反発し合って生きてきた。


なぜか親同士は仲が良く、かたく結ばれてしまったくされ縁。

嫌いなのに、どうにもこうにも離れられない。


それがあたしたちの関係だった。



ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン。


飽きずに懲りずに今日も我が家に鳴り響くインターホン。機械的なそれが妙にいびつに聴こえた。


「おはよう成くん。あの子から連絡いってないかしら?」

「おはようございます葉子さん。来てたんですけど、心配で様子を見に来ました」


心配って何!?来なくていいって!

玄関で繰り広げられている会話にツッコミを入れる。来なくていいから重たい指を動かして連絡したのに意味がないじゃんか。アイツって本当に、あたしの気持ちを踏みにじる天才だ。

近づいてくる足音。悪魔の音。

ふとんを頭のてっぺんまでかける。合わせる顔がない。


「とーか」


乙女の部屋に入るならせめてノックくらいしろよ。ドアが開く音と同時に聴こえてきたアホな憎たらしい声に泣きそうになる。


魔法が使えるなら今すぐここから逃げ出したい。いや、昨日に戻ってあんなことしでかす前にコイツのことをぶっ叩いて起こしてやる。

というか、そもそもの話、コイツとの気色わるい縁を切ってやる。